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先端技術解説:5Gとミリ波、プリント基板の変化点

先端技術解説:5Gとミリ波、プリント基板の変化点

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高速・大容量が特徴の次世代通信規格「5G」の商用サービスが2020年3月から日本ではじまりました。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手3社が5G商用サービスを開始しており、5G対応のスマートフォンも発売されています。政府は2023年までに全国98%のメッシュ(10km四方のエリア)で5G基地局を展開する目標を掲げています。

ここでは5Gや高周波、ミリ波の違いや、プリント基板がどう変わっているのかと、各用途に利用されるプリント基板の種類を紹介していきたいと思います。

※2020年5月27日に公開した記事ですが、サイトリニューアルに合わせて内容を一部修正し、2022年10月12日に再度公開しました。

1. 次世代通信規格「5G」とは

5Gになり大きく変わることは、①多数同時接続、②超高速・大容量、③低遅延の3つと言われています。4Gと比べると通信速度は20倍、遅延は10分の1、同時接続数は10倍となるようです。(4Gは3Gの15倍の通信速度で、あの当時、4Gは物凄く速いなという体感がありました。)

今回の5Gは速過ぎて通常の操作ではあまり速さを体感出来ないと予想していて、ポイントとなるのは大容量の通信と多接続が遅延なく出来る点です。これによって、遠隔医療が可能になり、高精細なVRゲームや映画の配信があり、数多くのセンサー情報と画像処理と組み合わせることで自動運転やスマートシティが可能になります。

ただし、5Gの実現には通信インフラ環境が整わない間は、5Gの新しいサービスを利用することは出来ません。2020年度は5Gスマートフォンを持っていても5Gサービスが使えないということがありましたが、2022年度になり利用できるサービスが徐々に増えてきました。また、スマホ出荷台数のうち、5G対応スマホは2021年度時点で69%を占めており、2024年度には100%になる見込みだそうです。


2. 高周波と5Gとミリ波の違い

5G通信に利用される周波数帯とミリ波と呼ばれる周波数帯は、両方とも高周波です。5G通信に利用される周波数帯は、実は世界で微妙に異なっていています。日本では、3.7GHz帯と4.5GHz帯、28GHz帯に周波数帯を割り当てています。米国では、2.4GHz帯と28GHz帯、39GHz帯を利用する方向で、韓国では3.5GHz帯、28GHz帯を利用する方向です。

5Gで使用される周波数帯はSub6とミリ波に分けられます。Sub6は6GHz未満の周波数帯のことで、4G(LTE、Wi-Fi)と同様の通信技術を応用することで実現できます。ただし、Sub6の周波数帯では超高速・大容量通信は大幅には向上しません。
超高速・大容量の特徴はミリ波帯の特性によるものです。
一般的にミリ波とは、周波数が30GHzを超える周波数を差しますが、5G通信の周波数帯28GHzもミリ波付近なので区別せずにミリ波と呼ばれています。

3. 高周波対応の基板は材料が変わる

ミリ波領域に適合するためには、絶縁材料の誘電損失を少なくする必要があります。誘電損失とは誘電体に交流電場をかけた時にエネルギーが熱として失われることで、これにより信号劣化がおこります。特にミリ波領域では誘電損失による信号劣化の影響が大きいので、プリント基板の絶縁材料選定が重要になっています。

伝送損失が少ない樹脂の代表としてフッ素樹脂があり、テフロンやPTFEが有名です。耐熱性、耐湿性、耐薬品性に優れているのですが、その分硬すぎてプリント基板製造時の加工性が悪いという難点がありました。その他に伝送損失が少ない材料としてLCP(液晶ポリマー)がありますが、熱可塑性が高く基板製造時の高温処理で不良が出てしまう難点があります。

現在もミリ波領域向けの低伝送損失の樹脂材料の開発は各社でおこなわれています。
例えばパナソニック社製のMEGTRON6は、CCL(銅張積層板)の基板材料として販売されており、基板製造時の加工性がテフロンなどよりも優れています。

高周波に対応する製品だからといって、プリント基板全体の絶縁層を上記で紹介した伝送損失の低い材料でつくる必要はありません。高周波回路の層だけや、電波を発信するRFモジュール部だけを伝送損失の基板にする方法があります。


4. 5G通信に利用される基板とは

5Gの電波を送受信するための基地局や、5Gスマートフォン、スマートシティ実現のための様々な監視用センサー、自動運転のためのレーダーなどにプリント基板は利用されています。基地局用の基板は絶縁層とパターン層を何層も重ねた高多層の貫通基板の仕様が多いです。5Gスマートフォンや監視センサーには、5G通信用のRFモジュールが搭載され、この基板は超高密度配線のエニーレイヤー基板の仕様が多いです。自動運転のためのレーダーには、比較的大きなビルドアップ基板の仕様が多いです。


5. まとめ

高周波用途については、自動運転車向けで実用化が始まっています。また、世界各国では5G通信の実用化が進んできており、これから加速度的に数多くの製品が商品化されています。基地局のインフラが整い、全てのデバイスに5G通信用のモジュールが組み込まれる時代は近くなってきています。

 

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